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日時:2025年1月25日(日)13:30~16:00

会場:新潟日報メディアシップ2階 日報ホール

新潟日報みらい大学「ともに創ろう!にいがた ものと暮らしの物語」第3回公開講座「『着る』と『もの』の物語」を1月25日(日)、新潟市中央区の新潟日報メディアシップで開催しました。魚沼市出身のファッションデザイナー、タナカサヨリさんが出張中のパリからオンラインで基調講演し、自身のブランドやものづくりへの思いを語ってくれました。トークセッション「『着る』と『もの』作り手の想い」では、県内の産地で技術や文化の継承、発展に携わる3人がご登壇、意見を交わしました。会場、オンライン合わせて約120人にご参加いただきました。

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基調講演
これまでの100年とこれからの100年を紡ぐ
〜TANAKAという哲学〜

 

講師/タナカサヨリ(Sayori Tanaka)さん

(TANAKAデザイナー・ファウンダー)

時代超え愛される衣服を

 魚沼市(旧小出町)で生まれ、越後三山と魚野川の自然豊かな環境で育ちました。父は十日町で着物のテキスタイルデザイナーをしていて、デザインの資料や写真集など芸術にまつわるものが周りにたくさんありました。祖父は庭師で、それらが自分のクリエーションの原点になっていると思います。小学3年生の時には「将来の夢は洋服デザイナー」と作文に書いていました。
 東京モード学園を卒業後、ファッションブランドの「ヨウジヤマモト」に入りました。コレクションのコンセプトなどを担当する重要な部署に配属され、世界最高峰の日本の染色技術などに触れました。
 その後「ファーストリテイリング」に転職。当時の「ユニクロ」はグローバル化に向けた過渡期でデニムに力を入れていました。デザインの観点やチームワークなど、そこで得た知識は自分の財産になったと思います。
 勤務したニューヨークは、さまざまな人種の人がいて、性別や年齢などに隔たりが少なく、街にはボーダーレスな雰囲気がありました。大きなインスピレーションを受け、自分のブランド「TANAKA」を始めました。
 TANAKAは、今までの100年とこれからの100年を紡ぎ、時代や性別を超えて長く愛される衣服がコンセプトです。ファッションには流行のサイクルがとても早いイメージがありますが、ことし買って、来年には着られなくなるような服は作りたくない。
 TANAKAでは、デニム製品が人気です。元々作業着だったデニムのよい部分を残し、現代にアップデートしたデザインを考え、プリントや箔(はく)加工などの要素を足し、ディテールを追求しています。日本製のデニムは色合いや肌触りなどの品質が非常に高く、世界中でブームが来ています。

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 ブランドを通じて伝統工芸や職人技を後世に残し、若い世代に知ってもらいたいとの思いで、作品に取り入れてきました。
 鹿児島県奄美大島で大島紬(つむぎ)の技術を受け継ぐ工房とのコラボレーションでは、伝統的な泥染めをいろいろな素材に落とし込み、独特のムラ感や奥行きのある表現が生まれました。群馬県桐生市の横振り刺しゅうをスコットランドの老舗メーカーのツイード生地に施し、西洋と東洋のコラボを意識した作品も作りました。京都の西陣織や尾州(愛知県)の織物なども採用したことがあります。
 衣服は私たちの日々を彩り、装いは自分自身の思想を表すものだと考えています。TANAKAのブランド自体に伝統工芸の技術があるわけではないですが、志をいろいろな世代に引き継ぎ、新しい才能を育て、応援していきたいと思っています。

<タナカ サヨリ> 
魚沼市出身、ファッションデザイナー。東京モード学園卒。「ヨウジヤマモト」で企画やニットウエアの設計に携わった後、ファーストリテイリングが展開する「ユニクロ」で東京、上海、ニューヨークのグローバルデザインチームのリーダーを務めた。2017年、ニューヨークを拠点にブランド「TANAKA」を設立。

トークセッション
「着る」と「もの」 作り手の想い

パネリスト/

《塩沢紬》桑原 博さん(塩沢織物工業協同組合理事長)

《亀田縞》小林堅治さん(カメダプラス代表取締役)   

《五泉ニット》長谷川泰さん(ナック代表取締役社長)

コーディネーター/

山田孝夫 新潟日報社論説編集委員

※パネリストとしてご出演予定だった十日町きもの、吉澤織物株式会社 代表取締役社長の吉澤武彦さんは大雪のためご欠席となりましたが、事前に寄せられたコメントを会場にてご紹介させていただきました。

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-まずは自己紹介を。

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桑原さん)
 塩沢(南魚沼市)生まれの塩沢育ち。代々織物が家業で、越後上布を中心に長年、塩沢の織物に携わってきました。

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小林さん)
 新潟の魅力を伝えるため、亀田縞(じま)に着目。商品開発や観光振興などを通し、地域を盛り上げようと活動しています。

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長谷川さん)
 五泉市で創業50年になるニット工場の2代目です。自社PRと作り手に誇りを持ってもらおうとファクトリーブランドを始めました。

-伝統のルーツと産地の現状を聞きたい。

長谷川さん)

 五泉では豊富な水を生かし、江戸時代に織物生産が始まりました。戦後、和装から洋装への変化などでニット産地に転換。染織から仕上げまでの技術が地域内に残る、国内でも数少ない産地です。業界の国内生産比率は約1%。アパレルメーカーの受注生産を手がけ国内トップクラスのニット産地として頑張っていますが、生産金額、企業数ともにピーク時より減ってきています。

小林さん)

 亀田縞の発祥は徳川5代将軍綱吉の時代とされ、300年以上の歴史があります。元々は木綿の野良着で、腰まで水に漬かって農作業する際に身に着けていました。丈夫で耐久性も抜群。最初は一色だったが、庶民のおしゃれということで縞模様が増え、生地は300種類以上あります。大正期に600超あった業者は現在2社に。亀田縞と一緒に、機屋さんも応援していきたいですね。

桑原さん)

 越後上布(麻織物)は奈良時代からの長い歴史があり、高い評価を得ています。江戸時代に絹が入ってくると、麻より軽くて暖かく、通年で作業できるとして絹織物に伝統の技法が取り入れられ、昭和の初め頃からは絹が中心になりました。国の伝統的工芸品に指定されている塩沢紬(つむぎ)や本塩沢です。業界は厳しいが、生きているうちはこの仕事をしていたいですね。

-現在の取り組みは。

小林さん)

 2023年設立のカメダプラスは総勢25人。県内外の経営者が集まり、自由な発想で亀田縞に向き合っています。今や身の回りの衣類は海外製ばかりですが、この地域には織りの技術が残っています。オリジナル商品や土産物の開発、行政や団体などと連携したPRなどに取り組み、昨年は大阪万博にも出展しました。

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長谷川さん)

 OEM(相手先ブランドによる生産)では産地や社名が表に出ません。産地のブランド化に取り組んで11年目。五泉ニットを常時販売する複合施設「LOOP&LOOP」を作り、昨年11月に開いた「五泉ニットフェス」では工場を一般の人たちに開放しました。アパレルブランド「ビームスプラス」と連携し、認知度が飛躍的に上がったと実感しています。

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桑原さん)

 小学校に出向いて機織りの体験教室を開いています。塩沢の子どもたちに「地元にこんなにすごいものがあるんだ」と伝えていきたいです。この公開講座に合わせ、塩沢紬をはじめ、県内の伝統的工芸品を一堂に集めた展示会を開催しました。伝統的工芸品は技術や技法に100年以上の歴史があり、継続して作られているものです。私は伝統工芸士として機織りを実演しました。

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塩沢織物工業協同組合 桑原博.JPG
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-産地の展望や、担い手としての思いは。

桑原さん)

 新潟県は伝統的工芸品の数が全国で2番目に多いんです。異業種であっても、互いにリスペクトがあれば残っていけると思います。

小林さん)

 5年以内に海外に進出したいです。そのためにも「亀田縞といえばこれ」という代表的な商品を開発したいですね。

長谷川さん)

 ものづくりの楽しさを伝えて、五泉ニットの担い手をもっと増やし、産地を後世に引き継いでいけるといいなと考えています。

【トークセッション資料ダウンロードのご案内】

トークセッション「着る」と「もの」―作り手の想い に関連して、当日会場で配布いたしました新潟日報 掲載記事資料を下記よりご覧いただけます。
本資料では、登壇された各産地の特色や、作り手の声を紹介しています。塩沢紬、亀田縞、五泉ニット、十日町きもの、それぞれの伝統と革新に触れていただける内容となっております。ぜひご覧ください。

塩沢紬

亀田縞

五泉ニット

十日町きもの

トークセッションを終えて

 

トークセッションコーディネーター 

新潟日報社 論説編集委員 山田孝夫

 

 トークセッションを進めていてハラハラしつつも面白いと感じるのは、想定外の展開になる時だ。

 長谷川さんに「五泉ニットの認知度も最近高くなっていますね」と振ると、間髪入れず「そんなことはありません」。

でもその後に、発信力を上げている取り組みを紹介した。小林さん、桑原さんも熱く語り、もっと話す時間がほしい感じだった。

 私自身、さらに深掘りして聞きたかった。次は産地に足を伸ばして、職人さんたちの話に耳を傾けたい。

工場見学を実施している地域も増えた。顔の見えるメイドイン新潟がそこにある。

来場者の声

《デザインの参考に》
 何年も愛着を持って着てもらえるデザインを考えるのは大変だと思うが、タナカさんの話が参考になった。ウエディングドレスのデザインを学んでいるので、着物や民族衣装などの要素も取り入れてみたい。
(新潟市内のファッション専門学校に在籍する10代女性)

来場者の声

《豊かな発想力に感銘》
 デザイナーは「中央の人」という印象があったが、タナカさんは地域や家族を大事にしていると知り、新潟の誇りだと感じた。セッションでは、いろいろなコラボレーションで産地を盛り上げる姿勢や豊かな発想力に元気とパワーをもらった。
(五泉市60代男性)

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