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「村上木彫堆朱」地元小学生が見学!

  • no-tsurumaki
  • 5月26日
  • 読了時間: 3分

更新日:5月29日

国指定の伝統的工芸品、地元の村上小4年生が見学

 木地に彫刻し、漆を塗り重ねた村上市の伝統的な漆器「村上木彫堆朱(むらかみきぼりついしゅ)」。国の伝統的工芸品の一つです。産地である村上小学校の4年生45人が5月下旬、地元で育まれた伝統文化を知る「村上堆朱学習」の一環で、村上堆朱に関する資料や市内の職人の作品を展示販売する村上木彫堆朱会館(村上市松原町3)を見学しました。

繊細な模様、天然の漆を何度も塗り重ねて

 まずは、会館の2階で彫師の作業場を見学。村上堆朱事業協同組合理事の菅原豊さんが、村上木彫堆朱の特徴や歴史を生徒たちに説明しました。村上木彫堆朱は江戸時代に藩主の奨励を受けて町民に広がり、盛んになっていきました。彫りも塗りも全て手作業で行い、木地師、彫師、塗師が分業で製作を担っています。

堆朱の「堆」という字は、「重ねる」の意味があります。朴(ほお)、栃(とち)、桂(かつら)といった木材に細かい模様を彫刻し、そこに天然の漆だけを何度も塗り重ねて仕上げる独特の技法で作られています。

 「使う人に喜んでもらえるようにと、職人が心を込めて一つ一つ作っています。地元の小学生の皆さんにも、ぜひ手に取ってたくさん使ってほしいと願っています」。菅原さんの言葉を、生徒たちは真剣な表情でメモしていました。

村上木彫堆朱の特徴や歴史を説明する、村上堆朱事業協同組合の菅原豊さん(左)
村上木彫堆朱の特徴や歴史を説明する、村上堆朱事業協同組合の菅原豊さん(左)
専用の彫刻刀「裏白(うらじろ)」を使い、木地に模様を彫る職人
専用の彫刻刀「裏白(うらじろ)」を使い、木地に模様を彫る職人
細かい模様を施す職人の手元を見つめる生徒たち
細かい模様を施す職人の手元を見つめる生徒たち

味わいを増す「つや消し」、豊かな表情を生む「毛彫り」

 作業場見学の後は、1階の展示コーナーに移動。市内の職人たちが生み出した、美しいお盆や菓子器、茶道具などが並びます。木地に花や鳥などの模様を彫刻した後、朱の漆を塗り重ねる「つや消し」をし、より豊かな表情を生むために細かな「毛彫り」を施します。すべて手仕事で作られた村上木彫堆朱は使い込むほどに色とつやが増し、「表情」の変化を楽しむことができます。

木彫りと漆技法とを合わせた現在の木彫堆朱の基礎は、江戸時代にできたといわれています 
木彫りと漆技法とを合わせた現在の木彫堆朱の基礎は、江戸時代にできたといわれています 

展示コーナーを案内してくれたのは、村上堆朱協同組合の代表理事・小杉和也さんです。村上木彫堆朱の製品は、かつては花瓶や飾り物が主流でしたが、時代の変化に合わせてアクセサリーや時計といったより実用的な品物が登場してきました。彫刻する模様の種類は数え切れないほど多くあるといいます。小杉さんは「例えば『笹川流れのイメージで彫ってほしい』など、お客さんの要望を受けてオーダーメイドで模様を提案することもできます。彫師は絵の勉強もしているんですよ」と教えてくれました。

村上木彫堆朱でよく使われる「地紋」の見本を説明する、村上堆朱事業協同組合の小杉さん(右)
村上木彫堆朱でよく使われる「地紋」の見本を説明する、村上堆朱事業協同組合の小杉さん(右)
木地に色漆を塗り重ね、最後に彫刻をして仕上げた「三彩彫」の手鏡。彫りの繊細さは指先からも伝わります
木地に色漆を塗り重ね、最後に彫刻をして仕上げた「三彩彫」の手鏡。彫りの繊細さは指先からも伝わります

 見学を終えた村上小4年の小柳優楽さんは「家には村上木彫堆朱のおはしがあります。大切に使いたいなという気持ちが大きくなりました」とうれしそうに話していました。堆朱のアクセサリーを眺めていた石黒伶さんは「大人になったらきれいな堆朱を自分で買ってみたいし、堆朱を作る職人さんにもなってみたい」と笑顔を見せてくれました。村上の地でつむがれてきた伝統の技と職人たちの思いは、地元の子どもたちにもしっかりと伝わったようです。


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